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「あれだけの手勢をまとめて、こんなに速く進めてこられるとは、さすがだな!」  そう言う、イカルの言葉は弾んでいる。  目の前ではハイラル軍が大混乱に陥っている。  その混乱に楔を打ち込むように、マガンの軍が割り込んでいく。  マガン軍の先鋒がハイラル勢の中軍に達した。  ハイラル勢の後軍はマガン軍に押し出され、街道からこぼれた。  多数の兵が川に落ちていくのが見えた。  マガン軍はハイラルの中軍に当たっても勢いを衰えさせることなく突き進み、采配を振るっていたハイラル軍の総指揮官の首を刎ねた。  マガン軍は討ち取った首を掲げ、声も高らかに勝利を宣言した。 「みんな! 勝ったぞーッ!」  イカルも拳を天に突き上げた。  軍神とも謳われる大将軍マガンが率いる軍勢に、総指揮官をやられたハイラル軍はあっけなく崩壊した。  マガン軍に後続の歩兵部隊が到達した時点で、本格的な掃討作戦になると、水の引いた河岸にハイラル兵の死体が積み上げられ、捕虜が並べられた。  イカルは川を渡ると、マガンの元に片膝をついて口上を述べた。 「閣下、御自ら出陣くださるとは、恐悦至極に存じます」  遣いの者に持たせた手紙は、無事にマガンの元へ届けられたのだ。  マガンは、イカルの後ろに控える治安部隊の隊員たちやバンをはじめとする村人たちを見渡し、 「皆も、よく耐えてくれた。王家の直轄領に許可なく領土の兵を入れることは立派な反逆行為である。おかげをもって、王の領地は守られた。王に代わって儂から礼を申す」  そう言うと、マガンは頭を下げた。  大将軍から頭を下げられた村人たちは、どのように応えればよいのかわからず、あわてて跪いて額を地面に付けた。治安部隊の隊員たちは敬礼姿勢のまま硬直している。
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