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3.君は誰?
誤魔化し切れない激痛に視界が霞み、畳のザラついた感触を感じる。
自身で作った血の海に、湊世はうつ伏せに倒れていた。
こうなったのは、たしか湊世が長谷川家の跡継ぎに決まったことと、彩が許嫁になるという報告を義父から聞いたすぐ後で、背後から胸を一突きだった。
口を開いた瞬間、こぼれ出たのは血の塊。
ぼんやりとした視界に、真っ赤に染まった畳が見える。
痛みが、苦しみが、ただただ漆黒の感情に心が塗り潰される。
だんだんと意識が遠のく。
眼前の鮮血を、誰かの足が波紋を生みながら踏みつけた。
きっと自分を刺した人物だろう。
──君は、誰なの?
そこで湊世の視界は黒く染まった。
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