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湊世と目が合うと彩は控えめに微笑んだ。
「あ、あのね、湊世も一緒に遊ばないかって……」
彩が言い終える前に、光太が言葉を遮った。
「ちげーよ! 湊世の修行の成果を見てやろうと思ってな。どうだ?」
光太は縁側に座り、湊世と絵を交互に見て、絵を軽快に拾い上げる。墨だらけの紙を見て一目瞭然だろうに。湊世はワザとらしく肩を竦めた。
「まだまだだよ。父さんには遠く及ばない」
そう言い湊世は懐から自分の父の写真を取り出した。
父と、その横には真っ黒な大鬼がいた。
水無月家は代々妖を退治する祓い屋の家系だ。
祓い屋の力は家系に依存し、式神使いや結界使い、様々な力を持つ。
その中でも水無月家は墨で描いた絵を実体化する力があった。
架空の妖を作り出し、使役し、妖を倒す。業界の中では名門と呼ばれる家で、多くの妖を生み出してはその数以上の妖を倒してきた。世間で語られている怪談話の中には、水無月家の作った妖も存在すると言われている。
湊世の父もその才能を引き継ぎ、水無月家の当主として多くの実績を積み上げたが、身体が弱く、湊世が十の頃に亡くなってしまった。そして、水無月家は一人息子の湊世に託されることとなった。
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