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カプセルの正体
大好きな土曜日。今朝はドクの餌皿にもガレージにもカプセルはなかった。カプセルがガレージに落ちてきたのは偶然だったのかな。
宿題を午前中に終わらせてお昼ご飯を食べたあと、パソコンで仕事をしているママに遊んでくると言って家を出た。行先は大通りの向こうにある病院だ。
小鳥を見つけた瓦屋根の家まで行くと、そこからは記憶をたどって大通りまで行った。信号機を渡って病院に着くと、僕が行っている病院よりもたくさんの人がいた。
受付が幾つもあって、たくさんの長椅子が並んでいた。座っている人も、行き来してる人も、誰も僕を見ていないし病気で来たわけじゃないからそのままエレベーターに向かった。
屋上に向かいながら出られるのか不安になったけど、誰でも行けるようになっていた。背の高い金網のフェンスに囲まれて、まるで学校の屋上みたいだなと思ったけれど、あちこちのベンチでお見舞いの人と車椅子の人や点滴を持った人がおしゃべりしているのは明るい雰囲気がして不思議だった。
家がある方に歩いてゆくと、フェンスのすみっこに校庭の木にもついてる木作りの巣箱があった。僕は思わず駆け寄って中を覗いたけど空っぽだった。
「こんにちは」
突然後ろから声がして僕は驚いて振り向いた。そこには笑顔の看護師さんがいて、その手の中に黄色いカプセルがあった。
「あ!」
思わず声が出てしまった。僕がカプセルを見たことに気が付いた看護師さんは、笑いながら僕の目の前にしゃがみ込んだ。
「これはお薬じゃないのよ。中身は内緒だけどね。君は鳥を見に来たの?」
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