書き人

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「彼女が黄色いカプセルに手紙を入れた彩月(さつき)さんよ」  僕は廊下のインターホンが付いた窓の前に案内された。しばらくするとブラインドが開いて、白い帽子とマスクを着けた看護師さんの声がインターホン越しに聞こえた。  部屋の中には上体を起こしたベッドに機械に繋がれた高校生くらいのお姉さんがいた。その周りを天井から吊るされたビニールシートが覆っていて、透明な巣箱みたいだと思った。 「こんにちは。こんな格好でごめんね。がっかりさせちゃったかな。来てくれてありがとう。お名前は?」 「は、はじめまして。小川翔大です」  お姉さんの声はとても元気そうで、どうしてこんな部屋にいるんだろうと思った。 「翔太くんか。カプセルは何個届いたの?」 「えーと、五つです。でも最初の二つは気づかないで捨ててしまって」 「そっか。五つも届いたんだね。しかも三つも読んでくれたんだ。恥ずかしいけど最初は愚痴を書いて入れてたんだ。そしたら減っている事に気が付いて。誰かが読むことがあるかもって、自分を励ますみたいに書くようにした。色々書いたなー。どれが届いたんだろう」  僕に力をくれた手紙。それを書いたお姉さんが、もっと大きな悩みを持っていた事に驚いた。僕は読んだ手紙のこと、自分のこと、学校で行動できたことを話してお礼を言った。 「ここまでたどり着いた翔太くんの行動力も男らしいよ。不思議ね。カプセルに入れた私の言葉は、君の力になれたのかな」  涙ぐんだお姉さんの目を見て、僕は「はい」と答えた。
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