あの日のいつかが今日でした

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高校三年の夏休み明けの最初の現国の授業で担任教師の有本が、 「今日は作文を書いてください。四百文字以内。最低でも三八〇文字以上。テーマは自由です。自分で決めてください。今日出来た人は今日提出、出来なかった人は明日提出。以上」 「授業しないんですか?」村田が言った。 「これが授業だ」 「課題でも作文あったのに、まだやるんですか?」 「あれは夏の課題の作文だ。これは授業でやる作文だ」 「文字ばっかり書いて、やってらんないですよ」 「気のせいだ。がんばれ」  有本が原稿用紙を配り始める。僕は前の席の村田からそれを受け取った。 「自由ってのが一番、困るんだよー、先生」村田が言った。 「じゃあ、俺が決めてやる。お前のテーマは『この夏にやり残したこと』だ」 「ありきたりで、王道って感じですね」 「変化球がいいなら『もし冷奴になったらかけて欲しい液体』だ」
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