31.粛清

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「――本当に? 本当に、お雪なの?」  血の雨が降る深更。総司は震える手で雪の頬を包み、おそるおそる尋ねた。  緩慢な動作で見上げる。血生臭い夜には不釣り合いの美しい二つ目が、まっすぐに自分を見下ろしているのが見えた。 「はい」 「……本当に?」 「はい」 「夢じゃなかった……」  ぐっと頭を引き寄せられる。頬には雨に濡れた総司の小袖の感覚。総司の腕の中は、いつだって陽だまりの匂いがする。だが、今夜に限っては、雪に負け劣らずの臭気がした。 「どうして京に?」  総司さんに会いたくて。そう口にしそうになり、ぎゅっと唇を噛んだ。総司の重荷になってはいけない。 「……土方さんにご用があって」 「歳三さんに? 歳三さんが雪を京に呼び寄せたの?」 「いえ……まあ、はい」 「いつから」 「……水無月の……末?」  記憶を辿って答える。雪の頬を包む総司の指先に力が籠った。 「みつきも前? それまでどこにいたの?」 「どこにいたのかは……教えられないかもしれません」  香也の薬種問屋は、いわば新選組隊士の隠れ家だ。もしかしたら、隊士である総司にも内密の場所かもしれない。隠れ家を教えるにあたっては、念のため歳三に確認した方がいいだろう。
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