31.粛清

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31.粛清

「真の武士の血は、碧色をしてんだと」  どこか得意げに言う土方歳三を見て、山南敬助が首を傾げた。 「大陸の故事ですね。君主を諫めるために自死した臣下の血が凝り、碧玉になったことから、忠臣を指す言葉となりました」 「細けえことはどーでもいいんだよ」  白けたように首の後ろを掻く歳三を見て、敬助が困ったように眉を顰めた。まるでそりが合わない二人に構うことなく、試衛館道場の縁側で寛ぐ雪と総司は、互いの生白い手首を見せ合う。 「どう? お雪の血は碧色をしてる?」 「……どちらかというなら青いです」 「歳三さーん。青色の血はなんですか?」 「知るかよ」 「頼りのないひとですね」 「んだとコラァ。そもそも、青い血なんてあるはずねえだろ。気色悪い」  額に青筋を浮かべる歳三を、敬助が「まあまあ」と宥める。気色ばむ歳三を華麗に無視した総司は、雪にこそりと耳打ちした。 「じゃあ、青い血は――ってことにしよう」
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