背中

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「いや、いわゆる中休み的なモンや……。台風の目に入ったんやな……」 「目……」 玖瑠美も横から顔を出した。 正成はゆっくりとぬかるむ足元を気にしながら納屋から表に出た。 「これも経験が教えてくれた事やな……」 正成は空を突き上げる様に背伸びをした。 その背中をオレンジ色の夕日が照らす。 「成明……」 正成に呼ばれ、成明はゆっくりと納屋を出る。 正成は振り返るとポケットからタバコを出してまた咥える。 「お前の人生はお前のモンや。誰かに言われて生き方を決めるなんてダサい事するんじゃねぇ。どうせ生きるなら、誰にも負けない格好良い生き方してみろ……。それなら喜んで玖瑠美も嫁に来てくれるだろうよ」 正成はそう言うと歯を見せた。 成明は苦笑しながら、正成の横に立った。
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