背中

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「しかし今年は台風が多いな」 「うん。もう二十号やもんね……。直撃もしたし、今回も直撃やなんて……」 玖瑠美は濡れたブラウスの胸を拭きながら答える。 「台風が来ても涼しくならんし」 玖瑠美は自分の使ったタオルを成明に渡した。 「使えよ……」 「もう拭いたし、大丈夫」 玖瑠美は成明の胸に押し付ける様にタオルを返した。 成明はそれを受け取ると水の滴る髪を荒々しく拭く。 「でも、ほんまに行かへんの……、高校」 成明は髪を拭く手を止めて、雨の落ちてくる灰色の空を見上げた。 「ああ、早く金、稼ぎたいしな……。高校行ってもどうせ勉強もせんやろうし」 成明はタオルを首にかけてにやりと笑う。 「高校も一緒に行けると思っとったのに」 玖瑠美は制服のスカートの裾を絞る。 スカートからも水が滴る。 「このままじゃ、確実に風邪ひくな……」
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