背中

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「何や、こんな天気やのに……、仕事しとったんか」 成明は正成が型にはめて作っている途中の瓦を見た。 数十枚の瓦が積まれているのを見て、朝から仕事をしていた事を成明は悟った。 「ああ、流石に焼き入れは出来んけど、型取りくらいは出来るからな……」 正成はタバコを消して、使い込んだ作業用の低い椅子に座る。 「おじさん、ナルが高校行かんって言うんよ。おじさんからも何か言うて」 正成は玖瑠美を見ると歯を見せて笑い、桶の中から泥を掴み、瓦の型に叩き付ける様に入れた。 泥の中の空気を抜くために叩き付ける。 よく空気を抜かないと瓦の強度が保てない。 玖瑠美もいつか成明に聞いた事があった。 「行かんのか……」 正成は型に泥を押し付けながら訊いた。 「ん……。ああ、瓦焼くのに学はいらんしな……」
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