背中

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成明はリュックを納屋の隅に置いて、首にかけたタオルを玖瑠美の肩にかけた。 「そうか……」 正成はそれだけ言うと捏ねる様にして、型に泥を押し込んだ。 「学があればこんな仕事せんでも済むんやけどな……」 正成は成明を見上げる様に見るとまた歯を見せて笑う。 玖瑠美は傍にあった椅子に座り、まだ水の滴る濡れた髪を拭いた。 「俺が継がんと、この瓦屋が無くなるやろ……。誰が焼くんか……」 成明は納屋の一角に積んである土を桶に入れると水を入れた。 「こんな仕事かもしれんけど、瓦も蛸壺も欲しいって人、まだまだ居るんやから……」 成明は桶に手を入れ、その土を捏ね始めた。 「蛸壺も作ってるん」 玖瑠美はタオルを頭から被ったまま訊く。
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