背中

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「瓦と蛸壺は同じ土から作るんや……。今じゃ、プラスチック製の蛸壺にどんどん代わっていってるけどな……。瓦も同じや、西洋風のスレート瓦ってモンになっていってる」 玖瑠美は何度か小さく頷くと、また髪を拭いた。 それを見て正成はまたニヤリと笑う。 「だから無理に継ぐ事もない。こんな瓦屋なんて俺の代で終わっても痛くも痒くもない」 「親父……」 成明は捏ねた土の入った桶を抱えて、正成の前に置いた。 正成はその桶の中を覗き込み、 「今日は雨やから、もう少し水少なめかな」 と言い、成明の顔を見た。 「わかったよ……」 成明は次の桶を抱えて、土を入れた。 「見とれよ、次は完璧やからな……」 誰にも聞こえない程に小さな声だったが、その言葉は正成にも玖瑠美にもちゃんと聞こえていた。 自然に二人は顔を見合わせて微笑む。
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