背中

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屋根を叩く雨粒の音がどんどん激しくなっていく。 「玖瑠美。そこに携帯あるやろ……。オカンに電話入れとけ。後で送ったるから」 正成は手を桶で簡単に洗うと傍に置いたタバコを一本抜いて咥えた。 「こんな一番酷い時に帰る事もないやろう」 玖瑠美はコクリと頷くと立ち上がり、古い木製の机の上に置かれた正成の携帯電話を手に取った。 その液晶画面の上に前髪から垂れる水滴が落ちた。 それを首にかけた成明のタオルで拭く。 「この風も、もうじき止む。それまで少し待ってろ」 正成は煙を吐き、そう言うと、型から瓦を取り出し、自分の脇に積む。 玖瑠美はそんな正成を見て、手に持った携帯電話を机の上に戻した。 「電話せんのか……」 両手を泥で汚した成明が玖瑠美に言う。 「うん……。もうすぐ止むなら帰れるやろうし。どうせナルと一緒なんは知ってるやろうし……」
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