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昼間だったのに、夜になる寸前くらいの夕暮れ時だ。あたりは薄暗く数メートル先も見えない。
ちりん、ちりん
鈴の音が聞こえる。少しずつ遠ざかっていってるみたいだ、それと同時に聞こえてくるのは。
今一度、今一度
俺が昔聞いた声、間違いない。若い女の声。するとその声を聞いた女の方が「あっちから声がした!」と騒ぐ。
「マジかよ、ほんとにいるのかよお!」
反対に男はすっかり怯えた様子でその場に尻餅をついてしまった。勢いよく俺に向かって叫ぶ。
「あ、あんた山の持ち主だったら知ってるんだろう!? イマイチドって本当にいるのかよ!?」
「は? なんだそれ」
「え!? だって、ここは神様がいるんだろ。鈴を鳴らして彷徨う、目の見えない神様!」
「この辺出身の親戚がいるって人からこの話を聞いたの。私少し霊感があるし、助けてあげたい!」
メメは確かに彷徨っているのかもしれない。しかし神様ってどういうことだ? 山神様とも違う。
今回の話を大学の仲間と話したところ、女は笑いものにされたそうだ。大学生にもなって霊感があるなんて言ったらそりゃそうだろ、当たり前だ。それを証明するために来たってところだろうか。男は完全に巻き込まれているだけか。
「助けてあげたいって。どうするつもりなんだよ」
「彼女は飴をあげて子供をあやそうとしてる。だったら飴をもらって満足したことを伝えればいい! もう許しをもらう必要ないよって。あなたは立派に勤めを果たしたって!」
ちりん、ちりん
今一度、今一度
女は声のする方に走っていった。何が何だかわからない、じいちゃんの話と違う。
「おい、神様ってなんだ。確かにここには言い伝えはあるけど、メメって女だ。『イマイチド』なんて聞いたことないぞ」
「ええ!? その話をしてくれた奴は神様だって」
「悲劇的な死に方した奴がなんで神様になるんだよ、おかしいだろ。番長皿屋敷も亡霊としては出てきたけど神様じゃないだろうが!」
「あ」
そんなことにも気づかなかったのか。
「それに、さっきから聞こえる鈴は? なんで目の見えない奴が鈴を鳴らす。普通逆だろ、目の見えないやつのため鳴らすんじゃないのか」
「は? 鈴? 何言ってるんだよ」
聞こえていないのか。そういえばさっきも女の声が聞こえたって騒ぐだけだった。鈴が聞こえたのは俺だけ?
ちりん、ちりん。
相変わらず鈴の音が聞こえる。いやちょっとまて。妙にあたりが静まり返っている。
「……メメの声が止まった?」
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