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いったいどの道をどう歩いてここに抜けたのか、唐桃自身にも皆目分からなかった。
狐につままれた思いで辺りを見渡すと、側の岩陰からふたつの人影がひょっこりと顔を出した。
「あっわっ、唐桃っ!」
「えっ参猿、そっちは狛犬か!良かった、無事だったんだな!」
「あ、き、じゅ、きじゅ!」
狛犬が駆け寄って雉珠の手を掴んだ。
「だめ……戻れ、狛犬」
雉珠が諭しても、狛犬はますますきつく腕にしがみつく。
「雉珠と一緒にいたいんだろ……」
参猿がつぶやくと、唐桃も頷いた。
「げど参猿、よくここに辿り着けたな。どうやって来たんだ?」
「それが、よく分からないんだよぅ。狛犬を追って、森をずうっと走ってるうちに、気がついたらここに倒れてた。起きたら、側に狛犬が寝てたんだ」
「──まさか、そんなこと……?」
ザワザワ……森の奥から生まれた風が、みなの間をすり抜けながら海に消えた。
四人は導かれるように海原を見た。
そして息を飲んだ。
舟が。
さっきまではどこにも見えなかった金色の舟が、浅瀬にしっとりと揺れている。
その舟からは光の道が伸びていた。道は月の真下、地平線まで続いている。遥か遠い波の向こうがここから見えるはずはない。けれど、道の彼方で金色に輝く宝玉の中に、しかと息づく陸地の影が、四人の目には確かに映った。
終
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