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「か、唐桃ォ……」
「なんだよ、どうした?」
「たた……大変なんだよぅ」
「うん?」
「き、雉珠が、雉珠の父ちゃんがさぁ」
「雉珠の?」
「だよぅ、雉珠の父ちゃんが、お、オイラのお父と話をしていたんだよぅ。こここ、輿入れの時を狙って、お父たちに、雉珠を盗んでもらうって」
「はあ……?」
「代わりに結納の宝は全部やるからって。雉珠の父ちゃんが、オイラのお父とそう約束してた」
話が全く見えてこなかった。
「それを聞いたのはいつだ?」
問うと参猿は肩をすくめた。
「十日前の晩だよぅ。すぐ唐桃に言わなきゃって思ったんだ、けどオイラ、お父が怖くてよぅ……」
「それで?山賊に盗み出された後、雉珠はどうなるんだ」
「こ……こ、殺して、山に埋めるんだって……」
「はあ!?」
思わず唐桃は強い力で参猿の肩をつかんだ。
「なんで、なんでだよ!雉珠は知ってるのか!?」
「そんなのオイラにもわからねぇよぅ」
小さな参猿はウワーンと泣き出してしまった。
「わ、悪かった……。なあ参猿、お前のお父と山賊の仲間が、輿入れの車を待つ場所は話してたか?」
「う、うん……森の途中の、祠があるとこ」
「案内してくれ、今すぐに」
二人は密かに夕闇の迫る森へ忍び込んだ。
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