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「離して……」  懇願する声を無視してリドは淡々と服を剥がしていった。這って逃れようとする体を、獣のように覆いかぶさり開かせる。アロイスは苦痛を訴えたが、次第に嬌声へと変わっていった。 「つまらない嫉妬をしているようだが、俺は城内でお前しか抱いていないからな。火遊びをするためにここへ来た訳じゃない」  アロイスはひときわ高い声を上げて体を痙攣させ、すぐに弛緩した。 「もう、無理……」 「無理なものか」  崩れそうな腰を掴んで抜き差しすると、弱々しく解けていた中がきつく締まり、リドは気を遣りそうになるのを耐えなければならなかった。もっとアロイスを苦しめなければ、気が済まない。  血の匂いが鼻をついた。激しく喘いだアロイスが舌を噛んだらしい。口を吸うと鉄の味がして、リドの破壊衝動は益々高まった。  散々弄ばれたアロイスは、運ばれた寝台にぐったりと横たわっていた。脚に絡んだ部屋着は汗と体液に濡れ、唇の端には血がこびりついている。 「すこし寝ちゃったみたい」 「そうだな」  リドはようやく穏やかな気分になり、アロイスの頬を優しく撫でた。 「珍しいね。いつも僕をとても気持ちよくしてくれるのに」 「……悪かった」 「リドでもあんなに腹をたてることがあるんだね」 「自分が挑発した癖に」  アロイスはちょっと笑って、猫のように顔をすり寄せた。白粉と紅が頬についた。 「でもさ、ジュディのご機嫌をとるのはわかるんだよ。あいつ、虫の居所が悪いと使用人に八つ当たりするからね。でも、ガルシアは放っておけばいいじゃないか。いつも暗い顔をしてるけど、害はないから」 「厳しいことを言うんだな」 「だって、澄ました顔をしていれば男が寄ってくるからね……おっと、ジュディの決まり文句が移っちゃった」  アロイスは起き上がろうとして、痛っ、と声を漏らす。 「まったく……これじゃ二、三日はまともに歩けないよ。明後日は結婚式だっていうのに」 「お前は当事者じゃないから、澄まして座ってればいいだろ」 「お尻が痛くてまっすぐ座ってられるかどうか……僕が恥かいたら責任取ってよね」 「何をすればいい?」 「もちろん、一緒にヨルベトに行ってもらう」  リドは可笑しくなって吹き出した。 「またそのことか」 「当たり前じゃないか。兄貴は僕とジュディが邪魔なんだよ。ジュディなんてさ、兄貴に殺されるなんて妄想してて、すっかり変になってる……ねえ、ジュディを口説いたりしてないよね?」 「するものか」 「ジュディは君と駆け落ちするつもりらしいよ。兄貴から逃れるためにね。君に恋しているのかどうか、双子の僕ですらよくわからないけど」  アロイスはリドの腕を強く掴んだ。
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