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 アロイスは薄い布地ごしにリドの体温を感じていた。服の上からでも、引き締まった筋肉に触れることができる。彼の裸体を見ることができたら、どんなに興奮するだろうか。きっと鎖骨や胸や脇腹に、所有の印をつけてしまうに違いない。ジュディットにはできない芸当だ。  使用人が突然部屋に入ってきたら困るだろう、俺だけでも着ていたらまだ誤魔化しようがあると、リドは決して服を脱がない。セヴランにふたりの関係を知られてしまったら、と考えるだけでゾッとする。今でも穀潰し同然なのに、兄の怒りを買って城を追い出されたら、すぐに野垂れ死ぬだろう。それならば、興がそがれるとしてもリドは着衣のままでいる方が安心なのだ。  でも、誰かがドアを開けたら破滅だと思いながら、ふたりとも一糸まとわぬ姿で愛し合ったら、どんなにか興奮するだろう……  そんなことを考えていると、廊下で誰かが聞き耳をたてているような気がして、アロイスは溢れる快感を漏らさぬように、リドの唇に食らいつき、息が詰まりそうになりながら舌を吸った。 「……ねえ、僕がヨルベトに行くことになったら、君も一緒に行ってくれるね?」  リドの腕の中で余韻に浸りながら、アロイスは甘え声で訊ねた。 「ヨルベト……セヴラン様がさっき話していた?」 「そう。以前は兄貴が赴任していて、サバル族と交戦してた。親父が死んで兄貴がこっちに戻ってきてからは、戦況は膠着……ううん、自軍が優先になってきたところかな、兄貴としては早くケリをつけたいらしくて、僕を指揮官に据えるつもりなんだ……こんなど素人より、有能な部下に任せたままの方がいいと思うし、実際僕が着任してもすることはないだろうね。本音は僕を厄介払いして、ガルシアとの新婚生活を満喫したいんだよ。そのためには、ジュディの結婚も強行するんじゃないかな。相手が見つかるかはわからないけど」  リドは苦笑した。 「こんなに広い屋敷なんだから、堂々と夫婦の語らいをすればいいだろう。俺たちとは違うだろ?声が漏れたところで、誰も非難しない」 「口が悪いなあ。確かに僕たちは隠れてこんなことしてるけど……」  そこまで言って、アロイスは廊下へ繋がる扉に目をやってから、声をひそめた。 「兄貴はもうガルシアに手をつけたんだよ」 「……へえ?」 「親父が死んで一ヶ月くらい経った頃かな、僕が地下倉庫に行こうとしていたら……」 「何しに行ったんだ?」 「ふふ、葡萄酒をね」 「飲んでばかりだな」 「僕のことはどうでもいいじゃないか……それでさ、階段を降りたところで兄貴の書斎から人影が出てきて……目を凝らすとガルシアだったんだよね」  アロイスは唇に指を当てた。
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