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進む準備
翌日、造成が進んでいく校庭を、私と、おっさんがぼんやり見ていた。
「「恐怖アパートいざなみ」か?まあ、いいんじゃないか?」
杖を突いた右腕が、変にカクカクしていた。
何?やりすぎ?やりすぎて疲れてんの?
「まあね。まあ集客は、私が」
ああ。おっさんはそう言った。
「やっとけ。まあ、所詮は子供騙しだが、こういうのは、お前等子供の領分だ。存分に騙せ。大人は、まあ大人の仕事をしよう。そっちは任せとけ。明日は、中間テストだしな?」
何だろう、酷く疲れて見えた。
「大丈夫?静也向かわせようか?」
「必要ない。これは、俺達の仕事だ。お前に、俺の隣に立つのは許した。だが、俺の命を預けるにはまだ至っていない」
「へいへい。あああ。まあ、あんたに取るに足りない子供扱いされるのは、もう慣れたけどさ」
ああ。まだまだ子供だからなあ。静也もお前も。
早く、大人に育ってくれればいいんだが。
「ああ!アパート建築はまあ通常通りに!内装に関しては私が指揮とるから!古色出してナンボよ!」
まあいいかあ。こいつ等は。
「――あ」
「うっきゃああああああ!!パパああああああああ!!」
やおら飛びついた幼児が、ハアハアし始めた。
「おお。来たのか?莉里?」
ほっぺスリスリした、父親の姿があった。
「うん!来たのよさ!パパ大好きなのよさ!」
「あああ。正男!お前も来たのか?!」
「来たよ馬鹿!忙しい中呼び出しやがって!」
クティーラと手を繋いだ、銀正男が駆けつけていた。
「うん。じゃあ、出し物の打ち合わせするか。田所、静也を呼び出しとけ。こっちは安全な仕事だ。あ、県も来たな?じゃあぷいきゃーだ。文化祭でやるぞ?」
いたたまれない、といった有り様の、県聡美が立っていた。
本気で、何考えてんの?このおっさん。
私の霊感が、今ここに迫る何らかの危機を、ハッキリ告げている。
それでも、私達を排除するのね?なら、私達は出来る範囲でやるしかないけどね?
そっと、私は何かを決意していた。
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