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隠れ家
ああ。ここか。ジル・ド・レは、闇の中に茫洋と広がる邸宅を仰ぎ見ていた。
「よくは解りませんが、崩壊から復興しつつあるようですね?奇妙な家ですが、ここなら、我等の欲望を満たせるでしょう。ジル」
背後に立った、フランソワ・プレラーティーが言った。
この、胡散臭い錬金術師が、子供を連れてくるのだ。
今更、子供を殺してどうなるのというのだ。とうに、俺はラピュセルを求めて、地獄に落ちるようなことを繰り返し、因果応報のように、地獄の業火で焼かれていたのに。
それでも、苦痛に喘ぐ少年を見ていた。
気が付けば、少年の首をかっ切り、腸をぶちまけ、邪悪な行為にふけっていた。
俺は、とうに地獄がふさわしい男だ。今更、それは変わらないのだろう。
「しかし何ですな、この国の浮浪児は、目つきこそ祖国と変わらずいじけけてはいましたが、着ているものは上等なようですな?まあ、フランス語を理解していない時点で、どうにも劣等な猿と言わざるを」
そこで、プレーラーティーの喉に、冷たい刃が突き付けられた。
「そこまでだ。プレラーティー。この刃は、貴様の喉とて容易に切り裂くぞ」
「ま、まあいいではありませんか。貴方も私も、とうに天上の神に見捨てられ、弥終の地獄で、共に硫黄の雨を浴びたものでしょう?仲よくしましょう?同病の誼ですよ?」
ああ。我がラピュセルよ。お前は、どうして。
その時、ジルの携帯が、ブルっと震えた。
プレラーティーにも、同様の要件があって、プレラーティーは、
「おや?うおおおお!素晴らしい!ジル!これが日本ですよ!ああ!思わず、股座がいきり勃ちますな?!」
――この、少年を、汚せというのか。
私は、この世で最も唾棄すべき行為に耽り、千言万語の罵詈を浴び、縊り殺された、ナメクジにも劣る、人の、神の道に悖った、人非人にすぎない。
それでも、ああ、それでも。
伏し目がちな、美しい生き物の艶姿を覗き込み、思わず、ジルの邪悪な下半身は、確かに屹立していた。
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