学校で

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学校で

「えー、クソ教師が学校サボりやがったので、今日のホームルームは私、学級委員長の田所紀子(たどころのりこ)が執り行います。文句ない?五火神焔扇(ごかしんえんせん)怖い?」  こっちはこっちで、生徒の教師への殺意がリミットを越えていた。 「あのゴミ教師をどうするのかは、あとで考えましょ?まあちょうどいいんでね、来週の中間テストと、文化祭について話し合います。まあテストは諦めて?だって、テスト問題作ってるの間違いなくあれよ?ああ影山(かげやま)さんと涼白(すずしろ)さんは、テストっていうのがどういうものかはあとで説明するわね?要するに、こないだの末広町みたいなのが延々と続く数日って感じ?」  俺達は、どこからきてどこへ向かう?という哲学的な問いに対し、ここは旧万世橋駅だから手前は末広町で、次は神田に決まっているだろうが。馬鹿めとか言われたのを思い出し、影山さんは暗澹とした気持ちになっていた。 「本命は、テスト終わったあとの文化祭よね?まあ今更出し物決まってないって時点で終わってる気もするけどさ。こんなの最低でも2年前に決まってなきゃいけないことよね?キチンと利潤を出せってえんなら」  話しながら、紀子に濃密な呪詛の帳が降りていったのを、式神の風間静也(かざましずや)は観測していた。 「去年、私達は吞気に喫茶店やろうとしたのよ。JKの手作りパウンドケーキなんか出したら売れるって思ったのに。理事長のアカンタレが開いた喫茶店如きに、客全部持っていかれて散々な失敗したのよ。廃棄の山だし、ウエイトレス役の子に払うギャラとか何たらで惨めな敗北をね。しかも!鵺春の奴が高らかに笑ってやがったのよ?!あのクソ役立たずのゴミ総帥の分際で!本気で呪殺してやろうと須弥壇建てたら静也に止められるし!ヤマンタカアタック食らっとけやあああああああああああああああ!」  ヤマンタカって大威徳明王(だいいとくみょうおう)だった。 「だからね?!今度こそは負けない!だから!予算だけは必死こいて増やしてきたのよ!全部使い切る!そのつもりで行く!で、どんな店開くか!意見出せお前等あ!」  この空気で、何か発言出来る人間は存在するのか?そう思っていたら、 「お、早速の意見か!流石だ影山さん」 「俺は、喫茶店を希望しよう」 「話聞いてたのかお前は?!」 「いや、待て。人間の若いメスが手作りたものなど、さしたるセールスポイントはないと認む。所詮プロ未満のメスが作ったと、喧伝していたようなものだろう」  グサッと来ること言いやがって。紀子は言葉に詰まっていた。 「一方、俺が望む喫茶店は、各テーブルにレコードプレイヤーを設置し、常にクラシックが聞き放題。しかも、ハイデッガーやサルトル、フーコーと言った哲学書も読める、まさに夢のような空間だ。俺の月給を、お嬢様に使い込まれるようなことはないそこでは決して!」  影山さん、お嬢様の(ジャスパー)に月給使い込まれたりしたのか? 「はい、クラシック喫茶って奴?他には?はい涼白さん」  意外に自己主張すんのね。この兄妹。紀子は舌を巻いていた。 「あ、あの、私は、可愛いメイドさんが、お客様にコーヒーを持ってくるのが、いいと思う。他に出来ないし、それに、お店には――ジャズが」  そう言って、静也を見て、顔を真っ赤にして席に着いた。顔を覆っていて、あれ?可愛い?  クラス中の男子がハアハアしている。  何人か、立てなくなってない?真琴さんの授乳見た時みたいに。 「メイド喫茶?まあいっか。他には、はい。排泄物」 「今、排泄物って言った?俺は、バッテン十字架にかけて腹ぶっ刺すのがいいと思うぜ?みんなでフルスイングで石投げてやろうぜ」  この馬鹿、出し物以前で話題が止まっていた。 「あとで考えろっつったろうがあああああああああ!出来もせんこと言うな!」 「俺は、紀子のディナーショーがいいと思う。ベースなら任せろ」 「お前等はどいつもこいつもおおおおおおおおおお!おお?!珍しくモブの発言来た!何だ渡辺?!」 「どうでもいいけど、君達祓魔官だろ?君達が、本気でやったお化け屋敷なんかどうだろう?百鬼繚乱見たし、安全に凄いのやれば、きっと見たがるだろう。うちの学校、金持ちの子弟ばっかりだし」 「その手があったか!」  インチキ臭い皇女が手を叩き、もっと早く気付けよ。って、みんなが思っていた。
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