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基本他人に無興味なヤモリ
体育教練が終わって、影山さんは教科書を開いていた。
学科教練には、ご主人がいるはずなのに、何故か来なかったので、おざなりな自習になっていた。
であればまあ、特に気にする必要はないか。
涼白さんを気にかけながら、影山さんは教科書を読み込んでいた。
昼休みに、ホイップクリーム山盛りのパンケーキを8枚も食べただろうに。
もうお腹空いたのか?アリオト可愛いなあ。
影山さんは、ポーカーフェイスだったが、消した尻尾が高速振動していた。
紀子辺りは気付いていたろう。影山さんはシスコンヤモリだと。
その時、影山さんを取り囲む女生徒達がいた。
誰もが、フフンといった表情で腕を組んでいて、その中心にいる生徒と、その取り巻き達だった。
面倒臭いのが囲ってるわね。紀子は口を出そうとしたのだが、影山さんを少し観察しようと思った。
一方影山さんは、取り囲む連中に、何ら興味を惹かれなかった。
全員ほぼ無力なメスの集団。アルコルを出すまでもない。
「貴方――影山君?私が誰かご存知?」
「済まない。君達には何ら脅威を感じないのだが。名前というと、確か、君は、おにぎり?」
ブフォオ。流石影山さんね。
「おにぎりじゃないわ!こちらにおわす方は、今をときめく最高のご令嬢!小田切榮お嬢様よ?!」
おにぎりは、無言でめっちゃピキってきていた。
駄目だって。影山さんは、うちの馬鹿師匠が娘のボディガードやらせてる妖魅学生よ?
そんなの気にする訳ないでしょうが。
「影山君?貴方、世情にはあまり詳しい方ではなくって?私に従いなさい」
「済まないが、君に接近する必要性を認めないのだが。俺の連続的時間を、君に割く余裕はないんだが。お嬢様に、勘解由小路碧様に匹敵し得る存在とは思えないのだが。おにぎり山の女王よ」
「おにぎりじゃないっつうのに!私の庇護を必要ないとおっしゃる気?!」
「勘解由小路先生の縁者だからって、あまり図に乗らない方がいいわよ?!お嬢様は、学園理事長の稲荷山宗春様の許嫁で、小田切インダストリーの財力を知らないの?!小田切インダストリーと稲荷山の財力に比べれば、ただ古いだけの勘解由小路家なんか!」
「苧環、下がりなさい」
取り巻きを引っ込めて、小田切は言った。
「確かに、私はいずれ、宗春様の妻となる身。それを知った上で、私を拒絶するのね?取るに足りない相手と、高を括るのね?」
まあ、うちの師匠に言わせれば、グループの現総帥?鵺春とおにぎりがしっぽりしたからって何だ?くらい言いそうね?
「高を括ると言うのは、少々理解しかねる。ただ俺は、今お嬢様に出された宿題を、暗記しているのだが。円周率だ。まだ1200桁しか記憶していない。碧お嬢様は今、6万桁だ。お前達に阿ったところで、記憶量が増えるのだろうか?」
ヒキっと顔を引きつらせて、小田切は去っていった。
よくやった!影山さん。
思わず、紀子はサムズアップしていた。
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