しょうもない令嬢の述懐

1/1
前へ
/39ページ
次へ

しょうもない令嬢の述懐

 放課後、おにぎり女はイライラしながら、迎えの車に向かっていた。  (わたくし)は小田切榮!誰もが羨む令嬢だと言われて生きてきた。  当然よ!だって、(わたくし)は小田切榮なのだから!  小学校に上る前、榮は稲荷山トキの台覧を賜ることになった。  小田切家には、土御門家の血も混じっていたから。    ふむ。(わたくし)を一瞥し、トキさまはおっしゃった。  霊力自体はございます。(すべか)らく、(あまね)物象(ぶっしょう)には霊力がございなすれば。しかし、それを活用可能な方は、決して多くは、は?  そこで、トキさまは何かを感じられたらしかった。  まあようございます。(わたくし)の学び舎で、霊異を学ばれませ。どうせ、高校卒業を待つ前に。  とか何とかおっしゃっていた。  両親は大いに嬉しがり、(わたくし)の洋々たる前途を、千言万語を持って祝福していたようだった。  トキさまは、天通眼をお持ちで、何か、(わたくし)の未来を見通されたのだということを、何となく聞かされた覚えがあった。  ああ。ああ!トキさまは、この未来をご覧になられたのですね?!  未来の夫たる、稲荷山宗春様を得て、(わたくし)の権勢はその勢いをままにすると思っていた。  一方、(わたくし)に阿ることのない、不快な同級生がいた。  はん。幾ら、(わたくし)よりも霊的に7、8段高いところにいても、所詮帝の侍従の娘でしょう?何ら敵し得ない。あんな女。  そう高を括っていたら、あれ?皇女殿下?百鬼姫?何これ。  小1で入ってきた、陰気な虐待された男の子?ふうん。粉かけるか。はあ?!口すら利かないって何?!  まあいいや放っとけ、と思っていた男子は、日本沈没を未然に防いだ、日本の守護神?え?あの獣臭い男が?志那都(しなつ)の風神とか呼ばれている?  そして、日本最高のロイヤルな令嬢である(わたくし)が、今やクラスのどっかにいるモブの1人?!ぶち殺したいがぶち殺せん!あのドブス皇女があああああああ!  もう壮絶にムカムカしていると、榮を追い越そうとする、汚い何かが咥えタバコでポケットに手を突っ込んでいた。  あ。  あん?  何か、けったいな利害が一致したことを認識していた。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加