田沼が独身だった場合

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「ご気分はいかがですか?ひなた様。」 「言わせる気か!! 恥ずかしかったに決まっておろう!!」 「あはは。 しかしひなた様、お顔が可愛らしいし 華奢で胸もアレもあって女性ですけど、 ホントに男性でもあるんですね。」 「そうなのだ。 抱きたい女もおったのだぞ。」 「へぇ、初耳です。 どんな女性ですか?」 「昼に法要があっただろう。 あれで完璧にあの世に行ってしまった女だ。」 「あ…。それで私今晩まで 寝所に呼ばれなかったんですね。 結婚式は、とうに挙げていたのに。」 「とてもいい女だったのだぞ。 一人で乗馬をしているときに、 崖から石が落ちてきて 脳天に穴が開いて亡くなったのだ。 いつものように、ウザいくらい ひっついていれば、 ……護れたかもしれないのに… こんな展開、…嫌なのだ。」 「…では、こういうのはどうですか? これは『番外編』ということで。」 「『番外編』?」 「そうです。これは あったかも知れないし 無かったかも知れない世界で、 『本編』の方では その美しい女性は生きている。 ひょっとしたら、 ひなた様とラブラブかもしれませんよ?」 「………それは、…………… …………………………好いな。 ……… …………寝て起きたら、本編に戻っていないだろうか。」 「それにはまず、 目を閉じませんと。」 「……うむ。」 その夜、ひなたは 四十九日ぶりにぐっすり眠った。 コメディ作品『殿姫さま!』番外編:田沼が独身だった場合
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