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「おい!! ここだ! 何度もお前に話しかけている!」
「は!? なんですか!? 誰なの!?」
「声がっ……!! デカい!!」
甲高い子供のような声に反応して返事をすると、「声がデカい」と叱られてしまった。
そう言えば、今私は耳栓をしているのだった。自分の声まで聞こえづらくて、つい大声で返事をしてしまったことに気が付き、私は慌てて耳栓を取り外す。
「失礼しました。どなたですか? 私はエレナ・ノイバウアーと申します」
「エレ……ナ……だと?」
声の主は、どうやら吹き抜けの二階にいるらしい。人影だけがゆらゆらと動いているのが見えた。
(おかしいわ。二階は王族じゃないと入れないはずよ)
しばらく上を見上げていると、手すりの影からちょこんと可愛らしい子供の顔がこちらを覗き込んできた。
「お前は、エレナなのか?」
「……はい、エレナ・ノイバウアーですが。貴方様は? どうやって二階に昇られたんです?」
「知らん! 気が付いたらここにいたのだ!」
流れるように悪態をつくのは、年端もいかぬ幼い少年。
金髪に青い瞳が、ライオネル殿下によく似ている。
(いえ、似ているというよりもむしろ……)
まるでその少年は、幼い頃のライオネル殿下そのものだった。服装だって見覚えがある。殿下が気に入ってよくお召しになっていたブルーの服だ。
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