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「禿げなくてよかったぁ!」
それぞれがスマホを腕から取り外して、変身のときに押した赤アイコンをタップすると、きれいさっぱり、先ほどと同じ服装に戻る。麻雀の続きと報告のために速足で歩いていると一人の女の子が俺たちの前に立ちふさがった。
「あ、あの、カッコよかったです!!」
女の子は小学校低学年ぐらいだろう。とても小さいが、小さいなりに言葉はしっかりしている。
「ありがとな」
赤城はニカっと白い歯を見せて、女の子の目線に立ちながら、女の子の頭を撫でた。女の子の顔がさっきより赤くなった気がしないでもない。
「赤城だけずるーい! あたし達全員に言ってくれたんだよ!」
「分かってるってそれくらい……」
全く、これだから黄田は……。
「まあ、全員で握手してやればいいんじゃねえの」
なんだかんだ言っているレッドとイエローよりも前に出て、俺は女の子の前にしゃがみこんだ。そして右手を出す。
しかし、女の子は手を出してくれない。何なら固まってしまって、その後、手ではなく、涙を出してしまった。
「ど、どうしたんだ?」
「こ、怖いよー!」
女の子は泣き出して走っていった。レッドは走って追いかけていったが、俺は追わない方が良いかもしれない。
「俺の笑顔ってぎこちないか?」
「そんなことはないと思うよ」
じゃあ、何が悪かったんだ。別に俺は平均身長、平均体重で、髪型も今流行りの韓国アイドル風のセンター分けのショートカット、髪色も黒色。タトゥーなんて入れていないし、目つきもそんなに悪くないと思っている。
「黒いからじゃない?」
「黒いから?」
白木から帰ってきた言葉がよく分からなくて、思わずオウム返ししてしまった。
「そう、黒いからだよ。ほら、黒って悪役のイメージあるでしょ? それにブラックホールの怪人たちは皆黒い色してるから、もしかしたら、テンタイジャーを騙している悪者って思われてるのかも?」
「それだけで泣くほど怖がるか?」
あまりにも偏見過ぎる理由に呆れてしまう。しかし、子どもというものは下手な芸術家よりも突拍子もないことを思いつく。だとしたら、俺だけ子どもから嫌われやすいということだ。
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