悪者の色

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 1週間後、俺は本当に学童にやってきてしまった。 「こんにちは」  子どもたちは靴を脱いで、バタバタとランドセルを畳の上に置く。そして、ランドセルから長方形の青やら赤やらのドリルとノートと筆箱を取り出して机に乗せた。遊ぶためにはまず宿題を終わらせなければならないのだ。  小学一年生は逆に退屈で、今ならやる気が起きない二桁の引き算を解いている。そして、四年生は割り算のひっ算、これもちょっと退屈だ。  最初の方は、好奇心でそれなりに宿題を見せてくれたが、後半はほとんど黄田の独壇場。やっぱり、歴が違うな。 「歴の問題じゃないと思うけどね」 「え?」  さっきまで掃除していたのか、雑巾を持ったままのベテランのおばちゃんが背後から声を掛けてきた。 「黄田ちゃんのこと、ちゃんと見てごらん?」  黄田は何やら子どもたちとワイワイしている。チョコやらココアやらのワードが聞こえてくるが、一体何の話をしているのだろうか? 「明日のクッキングの話だね。今、黄田ちゃんと話してる子たち、あの子たちはすぐ飽きちゃうから、ああやってお話しながらちょっとずつ進めてるんだよ」 「はぁ、そうですか」 「別に宿題の時間だからってお勉強だけしかやっちゃいけないって決まりはないからね。むしろ、最初の内はいろんなことをお話しした方が良いかもね。君もお勉強だけ教えてくれる先生より、雑談の多い先生の方が好きだったでしょ?」  なるほどな。確かに、昔からどこ出身だとか、そんなどうでもいい話から人間関係構築してきたな。とはいえ、どう入ればいいか分からねぇけど。
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