彼女とチョコミントを遠ざけたい

1/5
前へ
/5ページ
次へ
 北見唯花(きたみゆいか)は、付き合ってまもなく一ヶ月が経つ、おれの彼女。容姿端麗、成績優秀、清廉潔白を絵に描いたような女子。普通に考えたら一生がモブとして終わるはずのおれと唯花が付き合うことなんてないはずなのだが、きみは他人を色眼鏡で見たりしないのがいいよね、という彼女の気になる言葉とともに交際がスタートした。実際そんなことはないのだけど、おれは他人と接するときに要らんことを口走らないように細心の注意を払っているから、そこが唯花のお眼鏡にかなったのだろう。なお、実際のおれたちはどちらも裸眼である。  唯花は制服のスカートをウエストで折り曲げて電気ショックを食らっている最中みたいな踊りをTikTokにアップしたりしないし、三日三晩泣いた後みたいな腫れぼったいアイメイクをしたりもしない。ネットで得た知識をもって世界を語ったりしないし、軽々しく「○○とはずっと友達付き合いが続いていくんだろうな」などと口にしない。そういうところが好きだ。  これも色眼鏡で見ていることになるのか? なるんだろうな。でもそんなことをおれは直接、唯花に対して話すことは決してない。知らない方がいいことは、この世界に確かに存在するのだから。  さて、基本的におれは唯花に対して特段の不満などないが、ひとつだけ、どうにも腑に落ちない点がある。  それは、彼女が好きなアイスのフレーバーが、チョコミントであることだ。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加