黒い駒

師匠

　黒田は名人戦の対局の合間に、一瞬だけ視線を外し、観衆の中に不審な影を感じ取った。彼は集中力を取り戻し、再び盤に向かう。ロックアイランドの手は冷静かつ計算され尽くしており、その動きはまるで未来を見通しているかのようだった。

　対局が終わり、黒田は深い疲労感を感じながらも、ロックアイランドに一歩も引かず戦ったことに満足感を覚えた。名人戦の結果は引き分けとなり、二人の棋士の実力が互角であることが証明された。

　その夜、黒田は宿で再び街の噂を耳にする。囲碁サロンでの若手棋士の死に続いて、今度は将棋連盟の一人、黒井隆(くろいたかし)が突然倒れたという。黒井は彼の師匠でもあり、彼の死が黒田にとって深い衝撃となった。

　黒井の死因も不明であり、周囲には不安と疑念が広がっていた。黒田は黒井の死に関して情報を集めようと試みるが、真実に近づく手がかりは見つからない。彼はその夜、黒井との思い出を振り返りながら、何か黒井が伝えたかったことがあったのではないかと考え始める。

　次の日、黒田は再び名人戦の会場に向かう。道中、彼は黒井が最後に書き残したメモを見つけ、その中には「黒」というキーワードが記されていた。この一言が何を意味するのか、黒田は深く考え込む。

　会場に着くと、黒田は再びロックアイランドとの対局に臨む。彼は黒井の死と、「黒」というキーワードに心を奪われつつも、対局に集中しなければならない。ロックアイランドの冷静な目が彼を見つめ、彼の手を待っていた。

　対局が進むにつれ、黒田は次第にロックアイランドの策略を見抜くことに成功する。彼の手には、黒井の教えが生きていた。彼は黒井の教えを活かし、ロックアイランドに対抗する手を繰り出す。黒田の手はますます鋭くなり、観衆の期待も高まっていった。

　そして、対局の最終局面。黒田は最後の一手を打ち、ロックアイランドの手を封じることに成功する。対局は黒田の勝利で幕を閉じたが、彼の心にはまだ黒井の死の謎が残っていた。

　その夜、黒田は宿に戻ると、黒井のメモを再び見つめた。彼は「黒」というキーワードの意味を考え続けた。すると突然、彼の頭の中に一つの閃きが走った。

「黒」というキーワードは、ロックアイランドの策略を示すものであり、彼が黒井を狙った理由がそこに隠されているのではないかと考えた。黒田はさらに調査を進める決意を固め、名人戦の勝利の裏に潜む真実を追い求めるため、新たな戦いに挑むのであった。