黒番

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黒番

 黒田は黒井のノートを手に、黒魔術の真相を暴くために調査を続けていた。黒井の死後も、囲碁サロンには何か不穏な空気が漂っていた。黒田は次の犠牲者が出る前に、この連鎖を断ち切らなければならないと感じていた。  ある日、黒田は再び囲碁サロンを訪れると、異様な光景が広がっていた。そこには、またもや若手棋士が倒れており、彼の命が尽きているのが確認された。3人目の犠牲者は黒番直樹(くろばんなおき)という名の棋士で、彼もまた将棋と囲碁に精通していた。彼は黒田に瓜二つだった。 (犯人は俺と黒番を見間違えた?)  黒田はこの連続した死に共通点を見出そうとする。犠牲者の名前は殺された順に菅田健、黒井隆、黒番直樹。菅田以外は頭文字が黒。 (もしかしたら、犯人は『黒』ってダイイングメッセージを頼りに狙ってるんじゃ?じゃあ、菅田は?)  黒番とは黒石を担当する人のことだ。白石を担当する人は白番という。黒番になった人が先に打つ。黒井はあるけど黒番はさすがにない。もしかしたら偽名かも知れない。  黒番の死の直前、彼が囲碁サロンで最後に対局した相手が誰かを調べると、その名が「ロックアイランド」であることが判明した。黒田は疑念を強め、ロックアイランドがこれらの死と何か関係があると確信する。  黒田は再びロックアイランドに接触することに決めた。対局の場ではなく、よりプライベートな場で真実を探る必要があると感じた彼は、ロックアイランドの住む場所を突き止め、訪れることにした。  夜遅く、黒田はロックアイランドの住居に足を踏み入れた。古びた屋敷には、不気味な雰囲気が漂っていた。黒田は慎重に屋敷を探索し、ついにロックアイランドと対峙する。  ロックアイランドは黒田の訪問に驚くこともなく、静かに彼を迎えた。黒田は直球で質問を投げかけた。「黒井と黒番の死に、お前が関わっているのか?」  ロックアイランドは一瞬の沈黙の後、冷静な声で答えた。「彼らの死は、運命の一部に過ぎない。だが、お前がそれを知ろうとするならば、覚悟が必要だ」  黒田はその言葉に怯むことなく、ノートを差し出しながら続けた。「黒井が残したこのノートには、黒魔術に関する詳細が書かれている。お前はその術を使って、彼らを操ったのか?」  ロックアイランドは微笑みながら、ノートを手に取った。「黒魔術は、ただの道具に過ぎない。それを使う者の意志こそが、すべてを決定するのだ」  黒田はロックアイランドの言葉に疑念を抱きながらも、彼の冷静さと自信に圧倒されていた。黒井や黒番が命を落とした理由が、単なる黒魔術の力だけでなく、もっと深い意図が隠されているのではないかと感じ始めた。  その時、黒田は突然、ロックアイランドが手にしていた駒に目を奪われた。それは黒番が最後に使った駒であり、彼の死の直前に何かを暗示していたのかもしれない。黒田はその駒に触れ、何かが頭の中に閃いた。 「黒番が最後に打った一手は…」黒田は独り言をつぶやきながら、ロックアイランドの手元に視線を戻した。そこには、黒魔術の儀式を示す図が描かれていた。それは、対局の最中に特定の駒の配置によって発動するものであり、黒番の死と深く関わっていることが明らかになった。  黒田はロックアイランドに問いかけた。「この儀式の意味は何だ?なぜ彼らは命を落とさなければならなかったのか?」  ロックアイランドは静かに答えた。「それは、私の師が残した遺言を実行するためのものだ。彼の意志を継ぎ、黒魔術の力を現代に蘇らせるために」  黒田はその答えに衝撃を受けながらも、真実に近づいていることを感じた。彼はロックアイランドの陰謀を暴き、次の犠牲者を防ぐために、全力で戦う決意を固めた。果たして、黒田は黒魔術の影から逃れ、真実を解明することができるのか。彼の戦いはまだ終わらない。
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