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「ロバート様……私、こうしていられるだけで、幸せです」
肩をむき出しにしたメアリが振り返り、僕に頭を寄せてきた。
ただ寄り添うだけが、僕と彼女の最初で最後の夜?
彼女は、誰かの希望になりたいがために、僕の妃の座を捨てるという。どこにいるのかわからない、見ず知らずの転生者のために。
「どうしても行くのか?」
僕の腕の中で小さく彼女は頷く。
彼女の夢の「お姫様抱っこ」は失敗し、テイラー女史の描く男のように、女の喜びも与えられない。
惨めなこと、この上ない。
それでも僕は諦められない。彼女を離したくない。どんな手段を使っても。
「君がどうしても僕から離れると言うのなら、最後に伝えたいことがある……両親にもセバスチャンにも明かしていない、僕の重大な秘密だ」
僕の婚約者は、眉を寄せ身構えた。剥き出しの白い肩が震えている。
形の良い耳に唇を寄せた。
「僕は、君に会う前……ずっと前から『ニホン』を知っている」
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