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「『ニホン』は、外国と国交がなかったのか?」
「いえ、鎖国していたのは江戸時代です。ロバート様が前世にいらしたのは、二十世紀後半以降でしょう。ただ『日本』という名は、あまり知られていないのです」
「僕が知っている『ニホン』人はその紳士だけだ。『ニホン』は世界に知られていないのか?」
「日本のGDPは私が死ぬ前で世界四位でしたし、世界中に日本のゲームのファンがいたから、それなりに知られていたかと……いえ、そういうことではないのです」
彼女はなにを言っている?
「私たちの国は、世界では『ジャパン』という名前で知られています。外国人には『日本人』と名乗らず『ジャパニーズ』と名乗ります。ですから多くの外国人は、『ジャパン』は知っていても『日本』という国名を知らないかと」
・・・・・・迂闊であった。よくあることだ。国外と国内で、国の名称が違うことは。
「でも、私は外国に行ったことがなかったし、外国人の知り合いもいなかったので、本当のことはわかりません。スポーツの国際大会では、『ニッポン!』って応援するし……あ、ニホニウムという元素がありました。『日本』という国名も、案外知られているかもしれません」
どうやら疑惑は晴れたらしい。
「すまない。僕がもっと思い出せればいいのだが……」
「いいえ、ロバート様にとっては、忌まわしい記憶なのでしょう?」
「でも僕らが結ばれるのは、前世からの運命だったんだよ」
まだなにか言いたげそうなメアリの唇を、僕は塞いだ。
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