2 『生まれ変わり』と結婚できない理由

4/4
前へ
/124ページ
次へ
「ロバート、お前がメアリ嬢に無下な扱いをしたから、おかしくなってしまったのよ」 「ともあれ伯爵令嬢だろうが『生まれ変わり』は駄目だ。平民の子連れの方が遥かにましだ。いや今の時代、貴族令嬢より子持ち平民の妃の方が、好感度が上がるかもしれんな」 「冗談じゃない!」  僕は書斎の机をガツンと叩く。高祖父トーマス七世が愛用した年代物の品だが、知るものか。 「なぜ、王家の好感度を上げるために、僕がそんな女と結婚しなければならないのです!」 「ロバート落ち着け。お前が自分で言ったではないか。国民の支持を得るため、メアリと婚約する、と」 「その通りです。実際、彼女の視察先での評判はよく、新聞が好意的に取り上げてくれますからね」  僕は立ち尽くしたまま父とにらみ合う。  ネールガンド国王オリバー五世。実権のない王とはいえ、ただの中年男ではない。僕は、膝を折って頭を下げたくなる衝動を、必死に堪える。 「大史司長は、『生まれ変わり』からはどのような浄化を施しても魔をはらえないと、言っていたが」 「悪魔祓いはおじい様の提言で、禁じられたではありませんか。今はそのような時代ではありません」  長い沈黙の末、父は紅茶を一気に飲み干して告げた。 「時間がない。二か月待っても令嬢が変わらなければ、結婚は取りやめだ」  なんとか父オリバー五世の譲歩を引き出せた。  あと二か月。なにがなんでも、メアリに『前世』を忘れさせてみせる!
/124ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加