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「ロバート、お前がメアリ嬢に無下な扱いをしたから、おかしくなってしまったのよ」
「ともあれ伯爵令嬢だろうが『生まれ変わり』は駄目だ。平民の子連れの方が遥かにましだ。いや今の時代、貴族令嬢より子持ち平民の妃の方が、好感度が上がるかもしれんな」
「冗談じゃない!」
僕は書斎の机をガツンと叩く。高祖父トーマス七世が愛用した年代物の品だが、知るものか。
「なぜ、王家の好感度を上げるために、僕がそんな女と結婚しなければならないのです!」
「ロバート落ち着け。お前が自分で言ったではないか。国民の支持を得るため、メアリと婚約する、と」
「その通りです。実際、彼女の視察先での評判はよく、新聞が好意的に取り上げてくれますからね」
僕は立ち尽くしたまま父とにらみ合う。
ネールガンド国王オリバー五世。実権のない王とはいえ、ただの中年男ではない。僕は、膝を折って頭を下げたくなる衝動を、必死に堪える。
「大史司長は、『生まれ変わり』からはどのような浄化を施しても魔をはらえないと、言っていたが」
「悪魔祓いはおじい様の提言で、禁じられたではありませんか。今はそのような時代ではありません」
長い沈黙の末、父は紅茶を一気に飲み干して告げた。
「時間がない。二か月待っても令嬢が変わらなければ、結婚は取りやめだ」
なんとか父オリバー五世の譲歩を引き出せた。
あと二か月。なにがなんでも、メアリに『前世』を忘れさせてみせる!
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