〇吉田酒販・総務部(夜)

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〇吉田酒販・総務部(夜)

スマホのメッセージアプリ画面。 「吉本弘美」をタッチ。 画面切り替わる。その一番下に。 「よく考えたけど、お付き合いはやっぱり無理です。ごめんなさい。総務部にお邪魔したときは今まで通りで」 指が画面をスクロールすると、一枚の写真。 指は画面をタッチしてそれを大きくする。 写真は、村山裕也(29)と、吉本弘美(26)が、ジャージを着て鉢巻を撒き、二人三脚をして走っている場面。 スマホを持って、その画面を見ているスーツ姿の村山は、ギターバッグを背負っている。村山、スマホをスーツのポケットにしまう。 村山「ふう(とため息)」 村山が見上げた掛け時計は、「JUN・01」針が八時十分を指している。 村山、机の上の伝票の束をちらと見ると、意を決してドアノブに手をかけようとする。 そのタイミングで相澤一夫(55)、中に入ってくる。 村山「あ。部長」 相澤「あ、部長、じゃないよ。なんだその背負ってるやつは」 村山「すいません。さっきも言いましたが、今日は用が」 相澤「あの伝票はよ(と言って机に顎をしゃくる)」 村山「すいません」 村山、相澤の横をかいくぐろうとする。 相澤、その前に立ちはだかる。 村山、無理やりタックルして走る。 相澤、後ろに飛ばされる。 相澤「(こけたまま)村山!」 村山「すいません。月曜に早く来て片付けますから」 村山、走り去る。 相澤「(左の耳たぶを掻きながら)ったく」
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