〇木造アパート・101号室・六畳間(夜)

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〇木造アパート・101号室・六畳間(夜)

坂井、村山のエレキギターをアンプにつなげず弾いている。 村山、二人分のバーボンソーダのお代わりを作っている。 村山「なかなかだね。上手」 と言いながら、コップを坂井の前に置く。 坂井「いえ。僕のはなんちゃってです」 と言ってギターを置く。 坂井「悪魔の中でも、僕は楽器担当なんでこんな風に少しだけギター弾けますけど、スポーツの人は各々スポーツ、絵の人なんかは絵をかじってます」 村山「へえ。そんな世界。いろいろいるんだね、悪魔も。ね、坂井君、そろそろ俺の契約の話」 坂井「あ。そうでした。居心地がいいんでつい」 とバーボンソーダを飲むと正座になり、胸ポケットからスマホを出して操作する。村山も正座する。 坂井「ええ。村山さん。ギターが上手になりたいんですよね。どの程度のレベルになりたいんですか?プロとかを目指すのでしたら、ご要望に応えられないときも」 村山「そんなんじゃないよ。セッションに出ても恥ずかしくないぐらいになりたい。全部の女の人にきゃあきゃあ言われたいわけじゃないけど、一人ぐらい俺の大ファンになってくれる素敵な女の人がいるとうれしい」 坂井「ぷ(と笑う)」 村山「笑う所じゃない」 坂井「すいません。その欲があるのかないのかよくわからないところ、結構好きです。ちょっと待ってくださいね。今、計算します」 坂井、スマホを操作している。 村山「それ、何?何やってんの?」 坂井「(スマホをいじりながら)僕の先輩は紙のチェックシートで計算していたらしいですけど、今はアプリがあるんです。ちょっと待ってください。すぐです」 村山「アプリ」 坂井「出ました」 村山「はい」 坂井「243日と3時間。端数は切り捨てました」 村山「おお。妙な実感」 坂井「ご契約していただくと、その分、村山さんの寿命が縮まります。清算は御臨終の際に。鎌しょって黒い服着た僕たちが現れるのを想像されるかもしれませんが、ご安心を。そんな野暮なことは致しません。命は、契約の時点で減算されてます。御臨終の際には、減算されていることを忘れちゃっている方が殆どです」
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