4、乱入者

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4、乱入者

 タクシー乗り場で達也とさちが突っ立っていると、さちを追いかけてきた人間が現れた。 それは、さちに一方的に言いたいことだけ言われた西田剛史だった。 剛史は、さちが「チビのおじさん」と2人きりでタクシー乗り場にいるのを見た。さちが、おじさんを見てニコニコしてるのも気に障った。 とりあえず剛史は、おじさんの方は無視して、さちに話しかけた。 「太田。ひどいよ。俺に言いたいことだけ言って逃げるなんて卑怯!何を怒ってんの?説明くらいしてくれよ!」 さちは、剛史の方を見ると事務的に言った。 「今日は帰る。話があるのなら電話して。」 「じゃあ、LINEの交換してよ」 「やだ。お母さんに訊けば?私の家電の番号はそれで分かるよ。ウチの母と西田君のお母さんは仲良しだもん。私は、この人に送ってもらう」 さちは、そういうと今度はさちの方が達也の腕を掴んだ。 「この人は、私の勤め先の一番偉い人よ。送っていただくから安心して」 さちはタクシーに乗り込んで、達也を手招きした。達也は剛史に会釈をしてタクシーに乗り込んだ。  剛史は去っていくタクシーを見送りながら、中学生の時の雨の思い出を思い出していた。太田さちが何を考えているのか全く分からない。さちは何時も自分に気があるような無いような曖昧な素振りを見せる。  5月生まれの剛史に7月にバースデーカードを渡して来たことからして謎だった。
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