4、乱入者

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タクシーの中では、さちも無言だった。達也も気の利いたことが言いたいのに何も言えなかった。 達也は蒲田駅でタクシーから下ろされた。車を降りる時に達也は、さちからお礼を言われた。 「所長、変なことに巻き込んですみません。所長が居てくださって本当に良かったと思っています。今度、お礼をさせてください」 何という言葉を返したらいいのか分からない達也は、微笑んで首を横に振った。 「また、月曜日」と言ってタクシーの中のさちに手を振った。    月曜日、さちを見た達也は、違和感を感じた。 違和感の正体は、さちが書類を持って達也のそばに来たときに分かった。さちの背が低くなっていた。何気に足元を見ると何時もはローヒールのパンプスを履いていたのに、ペタンコの靴だった。丁度、達也の顔の前に、さちの顔が来るようになっていた。 ほぼ同じ身長なんだと達也は気がついた。達也が身長のサバを読んでいるように、太田さちもサバを読んでいた……達也が、さちの足元に注目しているのに、さちは気づいたようだった。 「私、165以上あるんですよ。本当は凄く気にしているんです。少しでも『ちっちゃ可愛い』女に見えるように努力しているわけです」 「太田さんは背が高くて素敵じゃない」と達也が返すと「本当にそう思っていますかぁ?」とさちは達也に顔を近づけた。そして、達也にメモを渡した。
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