5、はじめてのデート?

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 達也とさちは、ラインの友達になった。 トーク画面に表示されるお互いの言葉で、最初は自己紹介をした。両親のこと、友達のこと、今のお気に入り、やりとりの項目はお互いのプロフィールの交換の様だった。今まで生きてきた時間分の歩いてきた道。 仕事中は、お互いに以前(まえ)と同じ。話もしない所長と24歳の社労士の立場を貫いていた。  達也は、ただ自分の上に降ってきた幸運に胸をときめかせていた。部下が普通の女友達になった。異性の友達ができた事でさえ、奇跡だと思っていた。自分みたいなオタクと呼ばれる男は、『気持ち悪い生き物』だと世の中から排除されている。 イッチやジロー、アッチーだって、本当はリアルな女友達が欲しいのだ。みなみちゃんみたいに仕事で愛想良くしてくれる女性じゃなくて、普通に扱ってくれる女の子の友達。達也は、イッチたちに、さちのことは言えなかった。  そして、ラインのIDを交換してから3週間後の土曜日。夕方から達也とさちは居酒屋で2人で会うことになった。 何処のお店がいいのか達也には分からなかった。元々お酒もあまり飲まない。正直に、さちに伝えたら、さちは「蒲田の焼き鳥屋なんかどうでしょう?」と言ってきた。同じ東京でも達也が育った松濤と蒲田では同じ都内とは思えないほど街の雰囲気が違う。 蒲田は、さちのホームタウンだ。「蒲田いいね。僕は良く分からないから、案内してよ」とラインしたら、「OKです」と返事が来た。
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