5、はじめてのデート?

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 蒲田駅の東口の路地を入ると古いビルの中に「とりはち」という店があった。 さちが、達也を案内しながらお店の説明をする。 「所長、ここね、蒲田の有名店なのですよ。父や母も昔はデートで通っていたんです。うまい、安い、腹いっぱいが確実です。最後に鳥雑炊頼みましょう。もちろん、予約はしてあります」  達也は、さちが使った『デート』という言葉に狼狽えてしまった。  今日のさちは、半袖のTシャツにGパン、ペタンコ履。髪を括ってメイクはバッチリだ。カジュアルもいいところの格好なのに、やっぱり彼女は目立つ。達也は、自分の目一杯のお洒落、チェックのシャツにストレートジーンズ、ジャケットも着ていた。  達也は、さちと釣り合ってない自分にコンプレックスを感じてしまう。  達也もさちも酒には本当に弱くて2人でビールの小瓶1本しか飲めなかった。その分、焼き鳥を食べて最後には、鳥雑炊を食べた。お会計になって、さちがお財布を出すと達也が「ここは、私が払うよ」と声をかけた。 その言葉を聞いた途端、さちの機嫌が悪くなった。 「この前のお礼って言いました!今日は私の奢りです!」  達也は事前にネットで調べていたのだ。男が払うものだという知識を蓄えていた。 さちがムキになって「お礼」と言ったので、もうこれっきりで2度と2人で会わないと言われた気がした。
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