5、はじめてのデート?

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 焼き鳥屋を出てから2人とも黙ってしまった。駅までの道を2人で気まずい雰囲気を抱えていた。  沈黙の間をさちのペタンコ履の足音だけが響く。 達也は気になっていることを、さちに聞いた。 「私の背が低いからハイヒール履かないの?気を遣っているの?」  さちは、キッと達也を睨むと「違う!気なんか使ってない!」とぶっきらぼうに言った。 「私と所長は、ちょうど同じ背丈じゃない?ペタンコ履を履いたら正面の顔が見えるじゃない。だからそうしたの。見上げるのも見下げるのも好きじゃない。同じ身長なんだから所長は背が低いわけじゃないわよ。 いい歳した大人が変なところ卑屈にならないでください」 「真正面で私の顔が見たいからハイヒールやめたの?」 達也がさちにそういうと、さちは睨んだ表情のまま達也をじっと見つめた。そして、頷いた。 「所長から見たら私は子供でも、それでも対等に扱ってほしい」 ふくれっ面のまま、そう言ったさちに達也は訊いた。 「また、一緒に2人でご飯食べてくれる?今度は割り勘かな?」  その言葉を聞いたさちは、子供っぽい笑顔になった。それを見た達也は『可愛い』って言ったら、多分また怒ると思って何も言わないで首を縦に振った。  帰路の電車の中で、今日のは多分デートだ……と達也は胸が一杯になった…
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