6、日曜日は

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6、日曜日は

 次の日の朝、達也は早起きをしてリュックを背負って池袋に行った。今日のみなみのライブは路上だ。イッチを始め、何時もの仲間は揃っていて、達也が遅いとブーブー文句を言った。  その日は撮影もOKだったので、みんな御大層なカメラを持っていた。達也はカメラを忘れたのに気がついた。  アイドル達が次々に路上に立ってポージングする。それを取り巻いてカメラを構える押し達。  達也はそれをボンヤリ見ていた。さちとのラインが始まった頃から、オシカツに対する熱が冷めてきた様な気がした。既婚者でも、オシカツは別だと言って続けている男もいる。  でも、達也は自分のオシカツは「代替行為」だと気がついてしまった。 日曜日も会えるなら、池袋より蒲田に行きたかった。楽しそうなイッチ達の姿を見て自分はもう、あの場所にも戻れないと思った。  高輪のホテルでの一件の前までは、さちはアイドルと同じだった。さちと自分の間には大きな線が引かれていると自分でも納得していた。  でも、今は違う。さちに自分の彼女になってもらいたい。 どうしたらいいんだろう。 歳ばかり食って何も知らないオジサンだったなと達也は思った。  押しの熱狂に紛れて達也は、さちが彼女になってくれる良い方法はないかと思いながら、スマホで検索をしていた。
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