8、無理しすぎ

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8、無理しすぎ

 次の土曜日、2度目のデートをした。横浜の海の見える丘公園に2人で行った。達也は今日こそ、さちに『お付き合い』を申し込むと意気込んでいた。それが成功したら、彼女いない歴=年齢が終わる。LINEでのさちはお喋りで明るいが、実際に会うと言葉が多くはない。落ち着いた雰囲気がする。  相変わらず、達也は話題を振るのが下手だ。2人で黙ってローズガーデンの今は盛りのバラを見ていた。  さちは、達也の服装まで居酒屋の時と変わっているのに戸惑っていた。ベージュのイージーテーバードパンツを履いて水色のレギュラーカラーシャツをアウトで着ている。足元もカジュアルなローファーだ。いつもしている左手の時計が目立つ。ロレックスだ。なんだかステキになりすぎて、少し面白くなかった。自分だけが知っている所長の魅力に他の女が気づいてしまうではないか!  そんなことを考えながら、さちは大人しく薔薇の花を見ていた。  達也は、この後どこに行こうかシュミレーションを脳内で再確認していた。で、どこで大事なことを言おうかと、そっちの方に考えが行きがちになっていた。かなり緊張していた。  隣の達也がフラッとしたのに、さちは気がついた。 「どうしたんですか?」とさちが慌てて言うと同時に達也がしゃがみ込んでしまった。 「少し眩暈を起こしたみたい……」 「大丈夫?帰りましょうか?」 「少し休んだら治るよ…。あっちに行こう」と言って達也はレストハウスを指差した。
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