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『わかった。頑張りなさい』と達也が送ったラインに既読はつかなかった。
達也は、今年度の司法書士試験の日程を調べた。7月7日。後、1ヶ月半も先だ。暫く考えて筆記試験が終わるまで待とうと思った。
さちは、事務所の往復と試験勉強に時間の全てを当てた。
何だか、中学生の時に戻った気がした。あの頃は、剛史と同じ高校に行きたくて勉強ばかりしていた。
今は、余分なことを考えないために勉強をしている。司法書士の資格取得は、曽我部事務所に入って直ぐに始めていた。1回目の去年は落ちた。合格率は社労士よりも低い。試験は難しい。でも、その難しさが返って良かった。
剛史は相変わらず、土日のどちらか、下手をすると両方ともさちの家に来て父とテレビで野球を見ながらビールを飲んでいる。時々、さちの部屋を覗いてからかっていく。
「社会人になっても、未だ勉強するの?俺にはできませ〜ん」その剛史にさちはティッシュの箱を投げる。
剛史が帰ってから、母がしみじみと、さちに言った。
「あんたと剛史くんは双子の兄妹みたいになっちゃったわね。覚えてるの?」
「覚えてるって何を?」
「剛史くんママと私はママ友だったのよ。あんたたちは3歳ぐらいまで毎日一緒に遊んでたわよ」
「え?そうなの?ならなんで遊ばなくなっちゃったの?」
「西田さんが転勤になっちゃったのよ。で、小学校入学までに戻ってきたの」
「なんだ。西田君は元々、私のアニキなんだ」さちは、妙に合点が入った。
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