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11、お見合い写真
6月の下旬、達也は突然に、母、菊江から「今度の土曜日、お見合いだから」と言われた。
「えっ?聞いてないよ!誰とお見合いするの?」
「ずっと先方から保留にされていたの。ダメかな〜と思ったから、後出しで痩せた後の達ちゃんの写真を見せたのよ。そしたらね、お見合いしてもいいって仰ってくださったのよ。ほらほら、この方」と言いながら菊江はお相手のお見合い写真を持ち出してきた。
あ、盛ってあるのに、太田さんより見栄えがしないって思った写真の人だと達也は直ぐに気がついた。
「ダメ。お見合いはできない」と言いながら達也は写真を母に返した。
「あら、どうして……達ちゃん、結婚したくないの?」
「僕には彼女がいるんだ」
「え〜っ!自力で見つけられたの?だったらお母さんに言ってくれればいいのに。どんな方?お会いしたいわ」
「今、彼女は国家試験の勉強中。だから、少し待って」
「国家試験って何の?」
「司法書士だよ」
「わかったわ。先方には上手く言ってお断りしておきます。ほ〜んと意外なことってあるものだわ。達ちゃんが、自力で彼女を見つけるなんて……お母さんもビックリよ。でも、全然、デートしている気配もなかったわよね。本当にお付き合いしているの?思い込みじゃなくて?」
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