12、ちっちゃ可愛いひと

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達也の声は、かなり大きかったので近くに居た所員には、はっきり聞こえた。みんな、さちの方を見ていた。 さちは、所長は誰と結婚するんだろうと考えていた。  その夜の5分の電話は事務所に乱入してきた麗子の話になった。 「今日きた女性は小さい人だったけど、さちの言う『ちっちゃ可愛い』じゃなかったね」 「そうですね。ちっちゃいのと可愛いは別かも知れません」 「僕はね、嬉しかったんだ。君が焼きもちを焼いてくれたのがね」 「やきもちなのかな……すごく腹が立ったんですよ。あの言い方、外見だけしか言ってないじゃないですか。で、所長は近々、どなたと結婚なさるんですか?」 「さちとだよ。私の年齢(とし)を考えてご覧よ。もうすぐ40だよ」 「それってプロポーズですか?」 「どう思ってもらおうがいい。早く結婚したいと僕は願ってるんだ」  電話を切ってから、達也は少し反省した。40が見えている自分は早く結婚したい。 でも、さちは未だ25にもなっていない。勉強ばかりして碌に遊びらしい遊びもしていない。 第一、達也と付き合っていると言ってもデートは2回しかしていない。電話で話しているだけだ。  自分の希望ばかり押し付けてはダメだ。頭ではわかっている。 でも、早くさちと暮らしたかった。
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