13、剛史とマツ

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13、剛史とマツ

 野球のシーズンが終わる前に、剛史がさちの家に来なくなった。 さちは口述試験が目前で、さらに追い込みをかけていた。11月半ばには結果が分かる。落ちたら落ちたで来年またねだ。  試験の当日は、達也がさちを見送ってくれた。口述試験は15分。終わって会場を出たら、達也が待っていた。さちはスーツだったから、達也もスーツを着てきた。2人でそのまま、さちの家に向かった。 お付き合いの挨拶をすると達也が言い張ったからだ。歳が離れすぎていることを達也は気にしていた。  さちの父も母も、さちが連れてきたオジサンを見て正直驚いた。話を聞くと勤め先の曽我部所長だという。 「歳が離れすぎているのは重々承知で図々しいお願いをします。結婚を前提にお付き合いしています。結婚は直ぐではないです。時期を待ちます。でも、ご挨拶だけはしておきたかったのです」  さちの両親も礼を尽くして挨拶に来た達也に何も言うことはなかった。その後は4人で曽我部の仕事のことなどを話した。    達也が暇乞いをしようとした時に、ドアを開けて勝手に剛史が家に入ってきた。剛史と達也が会うのは、あの同窓会以来だった。 剛史が呆然としていると、さちが達也を剛史に紹介した。 「会った事あるよね。高輪で。西田君、この人が私の彼氏。曽我部達也さん」 達也は、剛史に頭を下げた。そこに、さちの母親が割り込む。 「西田君は、私の友人の息子さんです。さちとは兄妹みたいな感じになっちゃった」 「俺、さちとさちの彼氏と話したい。おばさん二階で話していい?」
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