13、剛史とマツ

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 思いがけず、さちの部屋にまで上げてもらって達也は少し喜んでキョロキョロ部屋の中を見回していた。 剛史は、あぐらを描いて座り込むと、さちに言った。 「太田に言われて俺も考え直した。マツに会った。マツったら……すげぇ苦労してやがった。シンママやってんのよ。で、あのマツが子供のタメにならないってコンビニとか掃除とかの仕事してたの……俺、やり切れなくってさ……」 達也には、全くわからない話だ。でも、黙って聞いていた。 さちが静かに剛史に訊いた。 「西田君は、自分もワルになるくらいマツが好きだったんでしょう?その気持ちはどうなの?変わったの?同じなの?」 「同じだろうな。こんなに辛いんだから……」 「だったら、全部引き受けなよ。マツのために、西田君のために……それは多分、本当にかっこいいよ。 西田君のお母さんたちは反対かもだけど、本当に好きな人とじゃないと付き合ってもつまんないの西田君は知っているでしょ? 結婚はもっとだよ。条件じゃないんだよ。きっと幸せは違うものだと思う」 剛史は、さちを見て達也を見た。 「太田も、このおじさんが本当に好きなの?」 さちは満面の笑みを浮かべて大きな声で「うん!」と答えた。 「俺、またマツの所に行ってくるわ。今度はマツも子供も連れてきていいか。」 「いいよ。うちの両親、西田君のこと息子だって思ってるみたい」
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