14、相合傘

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14、相合傘

 蒲田駅まで、さちが達也を送ると言う。 雨が降っていた。さちの母が傘を一本ずつ渡してくれた。さちの家を出ると、さちが自分の傘を閉じて達也の傘に入ってきた。 「濡れるよ」と達也が言っても、さちは「相合傘、やってみたかったんだもん」と言って傘を握る達也の手の上に手を重ねてきた。 すごく歳下の彼女は、なんでも面白がる。 「小学生の頃、相合傘の落書きをみんなで面白がってした。西田君なんて主犯だよ。 いろんな子たちの名前を入れてチョークであちこちに描いていた。 あの頃から、西田君はマツって女の子が好きだったんだ。でも、結婚となると大変だね。 本当の相合傘は両方とも肩が濡れる。それでも、相手が濡れていないか気にかける。 好きってそう言うもののような気がする」  達也は、彼女の肩が濡れないように肩に手を回して自分の方を向かせた。達也とさちの背の高さはほとんど同じで、そのまま初めてのキスをした。
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