15、オシカツ引退

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15、オシカツ引退

「みなみちゃん、アイドル辞めるんだって」  イッチから連絡が来た。最後のステージは何と1週間後だという。達也は自分も引き時だと思った。 「僕ももう次の推しを探すのはやめるよ」 イッチも同じだった。「俺もやめるつもりだ。ジローとアッチーはどうするかな……」 「10年くらい4人で連んでたな。この後は普通の飲み友達になる?」 「それも良いかもな。名前も個人情報も晒してな」  みなみの最後のライブはシアターだった。引退ということもあって客席は満員だった。若い時にしか見れない夢がある。アイドルはそういうものだ。達也も他の3人も「激推し4人組」として、最後までみなみの応援をした。それは、みなみのこの先をも応援していたのだ。ステージが終わって、4人はまた楽屋裏に呼ばれた。 みなみはファンから贈られた花に囲まれて達也達に感謝の気持ちを口にした。 「最後まで、私はあまり売れなかったけど、ずっと応援してくれてありがとう。みなみは、これからも自分の人生を頑張るから、みんなもお元気でね」と涙を溢して御礼を言った。 「俺らこそ楽しかった。俺らもこれでオシカツはやめるんだ。だから、これからもずっとみなみちゃんのファンだから……な?」とイッチが言って達也達の同意を促す。ジローもアッチーも達也も黙って首を縦に振る。  みなみにシアターの出口まで見送られて4人は外に出た。 「じゃあ、次に行きますか」とイッチが3人の方を向いた。
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